
A01 高感度・高分解能観測で探る惑星系形成領域の化学進化
近年、ALMA望遠鏡やセンチ波干渉計JVLAなど最先端の観測装置が稼働を始め、電波による宇宙観測の感度と分解能が著しく向上しました。その結果、今まさに星と惑星系が誕生している現場で物質が克明に捉えられるようになり、私たち自身の研究で、原始星近傍の物理構造と化学組成分布について新しい描像が次々と得られ、天体ごとの化学的多様性までもが顕著に見えるようになりました。この初期成果を発展させ、惑星系形成に伴う物質進化とその天体ごとの多様性の全貌を総合的に理解することは、太陽系を含む惑星系の物質的起源の理解における核心的課題と言えます。本研究では、統計的議論が可能になる100個以上の原始惑星系円盤形成領域に対し、ALMA望遠鏡などを用いた多波長の高感度・高分解能分子輝線観測を展開し、原始惑星系円盤の化学的多様性の全貌とその起源を明らかにします。また、紫外線強度や元素組成比などの異なる環境にある天体の化学組成を、その物理構造とともに明らかにします。領域全体からフィードバックとして得られる素過程の知見とあわせ、惑星系円盤形成領域で起こっている物理・化学現象を原子分子レベルで解き明かし、惑星系円盤 の化学的多様性ならびに太陽系の物質的起源の理解を飛躍的に進めていきます。観測研究の推進に必要な有機分子同位体やラジカルのスペクトル線周波数の精密測定も並行しておこないます。

A01計画班代表:坂井 南美
理化学研究所 開拓研究本部
坂井星・惑星形成研究室 主任研究員
坂井 南美
Nami Sakai
理化学研究所
開拓研究本部
総括・観測・分光実験
渡邉 祥正
Yoshimasa Watanabe
芝浦工業大学
工学部
太陽型原始星円盤/近傍銀河観測・分光測定
酒井 剛
Takeshi Sakai
電気通信大学
大学院情報理工学研究科
大質量星観測・広帯域受信機開発